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世界が愛する藍染め Ⅳ 蒅とインド藍 ~天然染料と草木染めのイロイロ話

世界が愛する藍染め Ⅳ 蒅とインド藍 ~天然染料と草木染めのイロイロ話

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こんにちは。tezomeya青木正明です。

藍染めの色素はインジゴという物質ですが植物のカラダの中では「インジカン」とう物質の状態で潜んでいる、と「世界が愛する藍染めⅠ」で簡単にお話していたことを覚えてくださっていますでしょうか?
このインジカンを大量に持っている植物のことを専門用語で「含藍(がんらん)植物」と言い、インジカンはたいてい含藍植物の葉の中にあります。
同じく葉の中にある酵素(インジカナーゼと言います)が働いてインジカンは「インドキシル」という物質に変化し、このインドキシルが酸素と触れると酸化され二つずつ合体してインジゴに変わります。
この2回の変身ごっこ、実は生きた葉の中では通常起こりません。ではどうすればインジゴができるのか?今から何千年も前に、私たちの先祖がこんなややこしい2段階化学反応工程を「発見」し、粛々と含藍植物からインジゴを生成してきたのです。
今回は、この藍染めをするための染料についてお話をします。。

日本で愛されてきた蒅(すくも)

古来日本ではタデ科のアイの葉を使って藍染めの染料「蒅(すくも)」を作ってきました。その段取りは次の通りです。

①収穫したアイを天日乾燥させて葉と茎に分ける。時間をかけて天日乾燥することで葉内のインジカンが酵素インジカナーゼによりインドキシルに変わる。場合によってはそのままインジゴにまでなる。
②完全に乾燥した葉に水を適度に含ませ時間をかけて徐々に醗酵させる。様々な菌、微生物の力を借りてインドキシルからインジゴへの反応を促す。
➂充分に醗酵させたら自然乾燥して完成。

説明の通り、蒅作りは乾燥葉を濡らしてから完成まで数カ月を要します。そのため後述のインド藍に比べて時間と労力がかかり、しかも途中に醗酵工程があるため長年の勘と経験も必要です。また葉の全てが加工品となるためインジゴ含有量もインド藍より少ないです。ですが、加工過程で醗酵しているためか不純物が多いためか、藍染め液の醗酵が容易に起こり易い、というメリットもあるようです。
お話したように蒅づくりには勘と経験の積み重ねが必要でして、この技術は染色のそれとは全く違います。そのため我が国では古くから蒅作りと藍染めは分業されてきました。江戸時代には阿波藩(今の徳島県)が蒅の産地として一世を風靡しました。藍といえば徳島と言われるのは、江戸時代に質、量とも素晴らしい蒅作りをする技術に長けた地域だからですね。
なお、16世紀頃までヨーロッパで盛んに使われた藍の染料「ウォード」も、この蒅に似た作り方です。植物の種類はアブラナ科なので全然違いますけど。

蒅は乾いた腐葉土のように見えます。葉を腐らせているので当然ですね。色も青ではありません。

インドで作られてきたインド藍

かたや、インドを中心とした暑い気候の地域では全く違う方法で染料作りをしていました。

①マメ科などの含藍植物を収穫しそのまま水に数日浸ける。インジカンと酵素インジカナーゼが水に溶け出し(インジゴと違いインジカンは水溶性です)インドキシルに変る。
②液から植物を取り去る。液に石灰を適量加え、激しくかき混ぜる。かき混ぜられることで空気中の酸素が液内のインドキシルと出会ってインジゴに変化してゆき液が紺色に変る。石灰は水に溶けにくい物質のため同じく水に不溶のインジゴが凝集するためのきっかけ物質役として働く。インジゴが生成されて液が紺色になったら数日静置しインジゴの沈殿を待つ。
➂上澄み液を取り去り残った沈殿物を乾燥して完成。

段取りの通り、インド藍は早ければ1週間くらいで完成します。また蒅のような難しい作業はありません。筆者も片手間で何回か自作しています。インド藍はインダス文明の時代から作られているのも、その単純な工程のおかげかもしれません。ただし醗酵工程を通っていないため、その後の藍染め液を作る際に蒅に比べて醗酵しにくいという説もあります。
ちなみに沖縄のリュウキュウアイを使った藍染めはインド藍に近い方法で染料を作っています。暑い地方だからこそできる手法なのかもしれませんね。

インド藍はこのように紺色の粉が多いですが、砕かれる前の紺色の塊で流通することもあります。沖縄では完全に沈殿させず少し水を含んだ「泥藍」として流通します。

以上、4回にわけてお話してきた藍染めですが、筆者としてはかなり駆け足のつもりです。実は生の葉を使えばもっと簡単に染められますし、今では天然物と全く同じインジゴを化学的に合成することも可能です。このあたりのお話も更に面白くまだまだ話題に事欠かない藍染めなのですが、それはまた別の機会とさせていただきます。

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