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世界が愛する藍染め Ⅲ 基本の藍染め ~天然染料と草木染めのイロイロ話
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「世界が愛する藍染めⅡ」でお話した通り、電子をプレゼントされたり盗まれたりして、「水に溶ける黄色いロイコ体」⇔「水に溶けない青のインジゴ」、という風に姿を変える藍の色素インジゴ。今回は、その染め方を解説します。
藍染めの方法
1.“何らかの方法”(ここが後ほど重要になります)でインジゴに電子をプレゼント(還元)し、ロイコ体にした染液を作る。水中には酸素分子が少ないので、ロイコ体は酸素と出会うことなく水中で水分子とフレンドリーな状態、すなわち水に溶けた状態で居る。色は黄色。
2.染液に糸や布を浸ける。するとロイコ体は友達の水分子たちに連れまわされて繊維分子のあちこちにいき、繊維分子とくっついたり離れたりする。

3.ロイコ体が繊維分子のあちこちに行き渡ったところで糸や布を液から引き上げて絞って広げると、空気中の酸素分子が繊維分子のあちこちにいるロイコ体から電子を盗む(酸化)。
4.繊維分子とたまたまくっついていたロイコ体は、酸化されることで繊維分子とくっついたまま水に溶けないインジゴのカラダに戻る。すなわち糸や布にくっついたまま水に溶けず定着、となる。また、同時に色も青になる。

という段取りです。藍染めは還元されている状態で染め、酸化させて定着と発色を促す、と言われるのはこういう仕組みによります。
藍を還元させる“何らかの方法”とは?
先ほど書いた“何らかの方法”ですが、現代は亜次チオン酸ナトリウム(通称ハイドロサルファイト、略してハイドロ)という強力な還元剤(すなわち他人に電子をプレゼントしまくる物質)があります。これを使い、インジゴをロイコ体に還元させて染色をします。ですがそんな薬品が作られる前は、「何らかの方法」として目に見えない菌たちの力を借りていました。電子を他人にプレゼントしやすい、すなわち他人を還元しやすい物質をたまたま作り出す菌(還元菌と言います)が私たちの周りにはいます。
沈殿藍や蒅(すくも)など、インジゴをたくさん含んだ藍染めのための染料を入れた甕に、還元菌をうまいこと呼び込み、甕の中で育てて、彼らの出してくれる天然の還元剤でインジゴをロイコ体に変えて、藍染め液を作るのです。このような、還元菌の多大な協力を得て藍の液を作ることを、昔から「藍を建てる」と言っています。この、菌の醗酵によって藍を建てる工程は、言うは易しですが行い難しです。目に見えずどこにいるのかも分からない菌たちを常に良き状態に保つには豊富な経験と注意深い観察力が必要です。更に、その土地の環境、使用する蒅など染料の状態、使う助剤などによっても状況が変わります。先述しているインジゴの話や染まる仕組みと言った理論的な事柄の他に、ままならない外的環境がいくつも関わってくるのです。ですから、藍の建て方というのは一筋縄ではいかず、本当に様々なのだろうと思います。
藍染め師の数だけ正解がある?
菌の助けを全面的にお借りする昔ながらの藍染め手法はこの通り非常に難しいのですが、それだけに奥が深く藍の魅力にハマり研究と実践を重ねておられる藍染め工房が全国にいらっしゃいます。筆者はこれまで記憶にあるだけで20軒以上の藍染め専門工房さん、藍を扱う染め工房や作家さんにお伺いしてお話を聞きましたが、それぞれ少しずつおっしゃることが違います。これは当然と思います。なにせ、土地・建物・染め液の量・藍染めの元となる染料などが違うのですから。たまに、「藍の正しい染め方を教えてください」という質問をいただきますが、いつも「わかりません」とお答えしています。おそらく、藍染め師さんの数だけ正解に近いお答えがあるのだろう、と思います。ちなみに筆者の工房、tezomeyaで普段行っている藍染めはインド藍を使用し、ハイドロと炭酸カリウムを使ったいわゆる「化学建て」という手法です。名前はカッコいいですが、昔ながらの藍染めではありません。研究と自分の勉強のために、菌の力を借りる「天然発酵建て」を行うこともよくありますが、普段から発酵建てばかりをしているわけではないため、この伝統的は藍建て方法は正直申しましてだいぶヘタクソです。筆者は、藍の染め方を偉そうに解説できるような藍染め師では実は全くありませんです。
さて、染め方の解説の中で出てきた「蒅(すくも)」や「インド藍」といった染料についてのお話がまだ残っているのに今気づきました。来週は藍染めのための染料について説明させていただき、藍の話の締めくくりといたします。






