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オリジナルって・・・・ その2

オリジナルって・・・・ その2

・・・さて、「その1」からの続きです。

パクるというのは、どこから以上を指すのか?
今回の東京オリンピックのロゴでもそんな話が出てましたよね。
あれはパクっていたのか、パクっていないのか?

当方の勝手なる結論を最初に述べさせて頂くならば、
「プロダクトである以上全てパクりだ」
としか、言いようがありません。
佐野研二郎というデザイナーさんがあのロゴデザインをした背景には、良く使われるローマン調のフォントをパクり、日本的な雰囲気を出すために赤丸を国旗からパクったのかもしれません。ご本人から聞いたわけではないので勝手な想像ですが、少なくとも私たちが観察して全く想像できない構成要素は無いですよね。すなわち、全てパクっているのだと思います。先の前提でお話しした通り、2020年東京オリンピックのロゴはやはりパクりの上に成り立っている表現物です。

「そんなこたぁわかってるよ! あのフォントを使ってるのが問題じゃないんだ。ベルギーの劇場のロゴをまねてるかどうかが問題なんだ!」
というお声が聞こえます。そうですよね。そういう問題ですよね。

ということは、問題になるのは、「真似をする」行為自体ではなく、「何の真似をするか」という、真似やパクりの対象がなんなのか、ということなのですね。
ここ、個人的にとても重要だと思っています。「そんなこたぁわかってるよ」という声も聞こえてきそうですが。
すみません、こういう話になると重箱の隅をつつきながら歩きたがる性癖でございますのでご容赦をm(__)m。

フォントを真似しても問題ない(世の中には勝手に真似してはいけないフォントもありますが)が、特定の劇場のロゴを真似ることは問題だ。そういうことですよね。

真似る対象物によって善悪がついてしまう(グレーなものも多分にあるでしょうけど)というこの現象。これをちゃんと考えるにはたぶん以下の2側面から考察しないといけないのだろうと思います。

1.法的な観点から
2.いわゆる「倫理的」な観点から

まず1.からつぶしていこうと思います。
「法的な観点」などと大上段からふりかざしてしまいましたが、当方は全く司法の専門でもなんでもありません。なので以前会社勤めをしていたころの知的財産に関する知識やネットから知った程度の上っ面な情報からなんとか頑張って考えてみます。

誰かが何かを作ると、「著作権」という権利が生まれます。著作権というのは著作権法という日本の法律によって定められている権利です。これがなかなかややこしい法律で当方もちゃんと理解できていないのですが、わかる範囲で述べます。
この著作権というのは、どのような著作物でもよいようです。そして、「無方式主義」といってその著作物、制作物が完成した時点でこの権利は自動的に発生します。これはちょうど日本人が生まれながらにして持っている基本的人権(すみません最初間違えて社会的人権と表してましたm(__)m)と同じような性質のものでしょうか。ちなみに、自動的には生まれず、申請・登録をしないと得られない権利が「特許権」「実用新案権」「意匠権」「商標権」ですね。
著作権というのは著作者によるいくつもの権利の束のようなものなのですが、その中でパクリや真似にかかわる権利はおそらく「複製権」でしょう。この複製権というのは、
著作権法第21条「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」
という条文によって守られています。逆に言うと、著作者以外が勝手に複製してはいけないのです。ただ、この「複製」という言葉の解釈がなかなか厄介なようで、実際に「真似られた」「複製ではない」という著作権侵害に関する訴訟の事例でもこのあたりの判断は大変難しいようです。ですが、昭和53年の「ワンレイニーナイトイントーキョー事件(歌謡曲の作曲がコピーだったか否かの訴訟で、まねでは無いという最高裁判決で有名な判例)」の例をはじめ多くのパクり系のものが結果的には著作権侵害にならないようです。著作権侵害は、勝手にズバリの写真を使ったとか、作者に断らずポスターを刷って売ったとか、違法ダウンロードをしたとか、そういうところで効果的に発動する法律みたいですね。

ではパクりを法的に罰することはほぼ無理なのかというと、そんなことはなく、特に今回のロゴのようなグラフィック系の表現物の審議に有効なのが先ほど出た意匠権です。意匠権とは意匠法という法律で守られた権利です。
意匠法第二条によると
「『意匠』とは物品の形状、模様若しくは色彩またはこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう」
とあるように、いわゆる工業デザインプロダクト全般に適用されるようなファジーな表現になっています。そして、意匠権第23条に
「意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠の実施をする権利を専有する。」
となっていて、簡単に言うと自分の意匠の“複製”だけでなく“類似”したものにも所有権が発動することになります。そして意匠法第24条にはごていねいにも類似の定義もしてくれていて、
「登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。」
としています。“美感に基づく”なんて言葉がとてもファジーなので、パクりに有効な感じですよね。
なんですが、ネットでざざっと意匠法による類似性の判例をいくつか見た限りでは、だいたい3割程度しかパクり認定されていませんでした。
更にいうならば、この意匠権は商標権、特許権などとと同様に登録が必要です。もちろんお金がかかりますし、有効期間があります(20年)。なので、「俺の作品の真似をしたな!」と訴えようとしても、そもそも自分の作品の意匠登録を事前にしていないことには裁判になりません。
調べた限りでは、法的手段を使いながら「悪いパクり」を正当に訴えるのはなかなか難しそうです。。

ちなみに今回の東京オリンピックロゴの件でいうともちろん佐野研二郎デザインのロゴは商標登録(名前とロゴデザインを一緒に商標権として登録できます)申請されているとのことです。同時にIOCも国際商標登録をしています。一方、ベルギーのリエージュの劇場のロゴは登録の有無が曖昧なようで(デザイナーは劇場がヨーロッパ内でしているはずだというコメントのみ)、もし登録されていなければ、先ほどの話のようにそもそも意匠権や商標権で争えないですし、劇場側が商標登録をしていたとしてもその後IOCが商標登録申請をした時点で何の問題もなかったということは、商標や意匠の類似には当たらないと既に判断されているはずなので(もし類似すると判断されたらそもそもIOCからの商標登録申請は受理されないはず)、やはりそもそも裁判にならないでしょう。すなわち、あとは先ほど述べた著作権侵害の問題になりますね。
今回ベルギーのデザイナーはIOCに対して使用差し止めの訴訟を地元リエージュの民事裁判所に起こしています。争点はおそらく著作権の複製権侵害となるでしょう。少なくとも国内ではこれを立証するにはあの程度のパクり(パクっていたとしてですが)では難しいのではないかと素人判断ですが思います。ネットサーフィンした限りも、ベルギーのデザイナーが勝つ可能性は極めて低そうなコメントばかりでした。裁判は9月22日スタートですね。デザイナーの主張が通るかどうかはわかりませんが、皆さんと行方を見守りたいと思います。

・・・法的な観点だけでだいぶだらだらと書いてしまいました・・。倫理的側面のはなし、明日でいいでしょうか・・?すんません。

「オリジナルって・・・ その3、最終!」はこちら!

「オリジナルって・・・ その1」はこちら!

手染メ屋
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