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スペイン的伝統芸能としての闘牛 ~スペインアンダルシア紀行第二回

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月刊で発行されるNDPC(天然染料顔料会議)メルマガに2005年2月~4月まで寄稿した1月のアンダルシア紀行文です。「手染メ屋@アンダルシア」とダブるのも一部ありますが、こちらはちょっと色や染めに関連するトピックを書かせていただきました。3回シリーズ。
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スペインと言えば? もちろんシェリー酒と生ハムですね、個人的には。でもまぁ飲み食いの話は別の機会にすると致しまして・・・。スペインにいて外せないのはやはり闘牛。特に滞在したアンダルシア地方は闘牛の発祥の街ロンダがあるせいか、本当に闘牛が盛んです。今回は、染織や色とは関係ないですが、ちょっと闘牛のお話を。

スペインに少しでも滞在された方ならご存知と思いますが、かの国は素晴らしくのんびりなところです。予定された時間通りに物事がすすむ、ということがまずない(笑)。列車しかり、バスしかり。お昼休みは午後2時からたいてい3時間以上とるし、動物園の開園時間から夜のライブの演奏時間まで、全てケース・バイ・ケースです。でも、一つだけ絶対に時間通り始まるイベントがあります。それが闘牛。

闘牛は5時半からスタート、と相場は決まっております。これは本当に一分足りとも狂わない。これは闘牛場にできる日なた(sol)と日陰(sombla)が綺麗に客席を両分する時が正にイベント開始時刻になっているからです。

闘牛場の客席はsolとsomblaで値段が全く違います。Somblaの方がだいぶ高い。理由は簡単、涼しいからです(笑)。闘牛はシーズンイベントでして、4月から10月の時期に催されますが、その時期スペイン、特に南部は暑い暑い。ですから、夕刻涼しくなったあたりから始める訳でして、solでは日光を浴びながら汗をかきかき、somblaでは日陰で涼しく観戦、となります。せっかく高いお金を払ってsomblaに座ったのに日が照っていてはお客さんが怒りますよね。だからsolとsomblaが綺麗に分かれる時刻が開始時間となっています。

でも、それだけならスペインのお国柄、スタート時間が遅れに遅れる可能性も・・。でもそれはありません。闘牛はマタドール(正闘牛士)が場内に入ってから牛を殺して出るまで全て段取りが決まっているのです。それもきっちり時間配分があって。

闘牛は一日に3人のマタドールがそれぞれ2頭ずつ、計6頭の牛を順番に殺します。そしてその順番もマタドールのキャリア年数によりきっちり決まります。1頭の牛が場内に入ると最初は牛のクセなどを確認する様子見があり、その後にピカドール(馬上槍突き士)の出番、バンデリジェーロ(銛打ち士)の出番と全て場内のファンファーレによって時間配分されます。そして真打のマタドールが登場したら15分以内に確実に牛を殺さなければなりません。パセ(牛をムレータでやり過ごすこと)の演技を一通りした後に、刃渡り80cmの剣による最後の一突き(これをスペインでは「真実の瞬間」と言います・・)で牛の息の根を止めてしまいます。そこまでの全ての行程を正確に30分以内に成し遂げます。そして6頭全て殺し終えた時間に日の入りで暗くなる、という算段。だからスタートが遅れることも絶対に無し。

そこには一点の間違いもありません。必ず牛は時間内に死にます。そして人間は絶対に危険な目には会いません。客席から危険に会うように見えるのは、観客が実際に牛を扱ったことの無い人間だからだそうです。闘牛は人間と牛との戦いではありません。牛はそんな平等な立場ではなく、ただの牛殺しショーです。全てコントロールされたショーであり、様式美さえも感じるイベントでした。そして、もっとややこしいことには、その様式美の中に少しの危うさを望んでいるココロが観客の中にあるんですね。それが事故だったり・・・。あぁ、なんてフクザツな娯楽なのでしょうか。

闘牛はその昔、奴隷や罪人相手だったのを牛に替えたものだそうですが、奴隷時代のイベントから数えるとその歴史は本当に古いものだそうです。その長い年月を経て段取りや不文律がきっちりと決まり、形式通りに演じられる。そして、その様式から少しだけの自由度を非日常として楽しむ。そしてその非日常が予想外であればあるほどハラハラドキドキ・・・。うーん、古典や伝統芸能って、こうやって楽しむものなのか・・。と、スペイン人に教わった気分になりました、闘牛を見て。かなり心境複雑でしたが(苦笑)。

ちょっと後味悪いかな、このコラム・・。次回はもっと明るい話題で!

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