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貝紫の事 ~5月の珠洲ワークショップの仕込み

貝紫の事 ~5月の珠洲ワークショップの仕込み

天然染料で染まる色の中に「貝紫」という色があります。
その名の通り貝で染める紫なのですが、どんな貝でも染まるわけではありません。

ある種の巻貝(アクキカイという種類のものが多いです)の内臓のごく一部にパープル腺とも呼ばれる、紫に染まる器官がありまして、その部分ばかりを集めて染めるんです。

ウチの工房でもこの内臓が手に入るとたまぁに染めたりワークショップをしたりするのですが、ふつうに流通している材料ではないのでそんなにしょっちゅうできるわけではなく、天然染料の中でもかなり珍しい部類に入る染めです。

・・・という貝紫ですが、その珍しい染料が比較的安定して手に入るのでワークショップを一緒にしてほしい、という依頼を石川県珠洲の染色家さんから頂きまして、「え、そんな簡単に手に入るの?」と喜び勇んでのこのこ出かけて行ったのが先日の火曜日。

今回はそのご報告でございます。

夜行バスで石川まで来て在来線で着いたのが七尾駅。
そこから珠洲の染色作家さんである落合紅さん、通称“椿姫”さんに拾って頂いてすぎ省水産さんに。

そこで見たのは、大量のアカニシ!

しかも、でかい!

アカニシとはアクキカイ科の貝でして、国内全域に生息する貝なのですが天然ものしかありません。しかもこれを専門に獲る漁師さんはいらっしゃらないらしく、ナマコ漁の網にかかるアカニシを頼んでキープして戴いておいたのだそう。

このアカニシ、パープル腺を持っている貝では世界最大です。しかも、そのアカニシの中でもかなりでかめ。
何度かアカニシ見ましたがこんなにたくさん大きいのがいるのは当方初めてでした。

もう、テンションアゲアゲのまますぎ省水産さんの杉原社長にお礼をお伝えして今日のメインイベントである貝の解体作業場所に向かいます。

今回の作業場はなんとフレンチレストラン。能登島の北端に近い“能登島サンスーシー”さんのホールをお借りしての解体です。

なぜフレンチレストランが作業場かというと、染料となるパープル腺以外のところはサンスーシーさんが調理下さって作業したご褒美に皆で戴くからでございます。

・・ということで、5人で300個以上のアカニシから内臓を全て取り出していきます。
作業開始!

道具は金槌とアイスピック。
ビールは作業者の燃料です。あしからず。

まず金槌とアイスピックで特定の場所に穴をあけます。

そして、その穴にアイスピックを入れて貝柱を引きちぎると、後はつるんと身が取れるという算段。
これ、お魚マイスターさんに教えて頂きました。これまでアカニシの内臓を取るの大変だったので、こんなに簡単に取れる方法を知ってびっくり。やはり餅は餅屋、ってやつですね。

取り出した身の全体がこれ。

画像に写っている身の下の方に紫色の部分がありますね。ですがこの部分はパープル腺ではありません。
この部位の裏にあるのがパープル腺です。

包丁で身を開けて・・、ここ!

全然紫色じゃないですよね。
パープル腺は、貝の内臓にいる間は黄色なんです。これ、貝の体の中ではこの黄色の色素でして、この色素が日光に当たることで紫色に変化して生地に定着します。
じつはこの貝紫、染めのメカニズムは藍染めと大変良く似てるんですが、今回は難しい話は置いておきます。

とにかくこの黄色の部分の周りだけを切り取って、染めに使う部分と食べる部分とに分けていきます。

皆さんで黙々と作業をしてどんどんストックが増えていきます。

こっちが染料部分のストック。

こちらは調理用ストック。

3時間ほどかけてすべての貝の解体終了。

今回の作業はここまで。
こうやって染料をストックしておいて、染め作業のワークショップは5月に行います。
というのは、先ほども少し言いました通り貝紫の染めには日光が必要なんですけど、今の季節の能登半島では日照時間が短く日の光の強さも足りないので、太陽が元気になる5月まで紫の染めはおあずけです。

さて、そして待ちに待ったアカニシ料理!
サンスーシーさんの長竹シェフが、普段はおそらくあまりまな板には出ないであろうこのアカニシを使ってくださった料理は3つ。

アカニシの磯の香りをしっかり取った濃厚なスープ
(すんません画像無)

そして、かるく湯通しして甘みを出したサラダ

さらに、バターとオイルとフォンでじっくりじっくり煮込んでオーブンで仕上げたエスカルゴ風。

いやいやどれも絶品でした。
特にエスカルゴ風仕立てのお料理はびっくり。もちもち感としっかりした貝の味とがオイルとソースにばっちり。
素人目にですが、どれもアカニシのこくのある味と歯ごたえを十二分に引き出されている料理とお見受けいたしました。

アカニシ、以前もお寿司にして頂いたことがありましたが、本当に美味しい貝です。
なんで普通に食材として出回らないんだろう、と不思議に思います。

最後に出たメインディッシュのハンバーグ(アカニシとは関係ないですが)がもうこれもほんとに美味しくて。
ご近所さんだったら毎週行きたいと思うような、とても丁寧なお料理を出されるレストランです。サンスーシーさん、本当にありがとうございました。ご馳走様でした。

そんなこんなで、美味しく更けていく能登の夜でしたとさ。

5月のワークショップも楽しみです。落合さん、本番も頑張ります!何卒よろしくお願い致しますです。

能登島サンスーシー
http://www.sans-souci.jp/

すぎ省水産
http://www.sugisyo.co.jp/

手染メ屋
https://www.tezomeya.com/

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